パンタジア本店。
日本のパン「ジャぱん」の完成を目指す3人のパン職人をサポートする
超有名店。
3人は少ない休日もここに集まり、新作パンの研究をしている。
「焼きたて25」の戦い、連日の撮影は、休む事なく続いている。
次から次と敵は得意分野を武器に3人に挑戦してくる。
手は抜けない。いつだって。
東、河内、冠の三人は、ほんの数日のオフの日にもパンタジア本店に
集まっては、次なる敵、課題地、食材の話合いを重ねていた。
「なるほど・・・それで発酵が50倍の生地が出来上がるのですね。
さすが東君です。」
「そうじゃ。あとは果物がどうなるのかなんだけど・・・」
「う〜ん。一体どんな方法がいいのでしょうか・・・」
『う〜ん。』
少年二人は、もう一人の仲間そっちのけで考え込んでしまう。
なんだか二人だけで話が進んどっとるようだけどな。
「アホやないか二人とも。今は練習なんやし、まずは何かの果物で試し
てみればええやんか。解らんモンは考えた所で何も出てこんで。」
俯いてた二人が顔を見合わす。
「おお そうじゃなっ」
「確かに河内さんの言うとおりでした。椅子の上で考えるより作って
みる方が何かヒントが出るかもしれませんよね。」
「せやろ。」
「よしっ ぜんは急げです!僕は月乃さんに頼んで東くんの理想の小麦粉
を一緒に買いに行ってきます。お二人は地下の冷蔵庫で適当に果物を選ん
でおいて下さい。」
冠は意気ゴウゴウと立ち上がり、お得意の予定立てを初めた。
「わかったんじゃ。頼んだぞ冠ィ!」
「僕が帰って来たらすぐに始められる様に準備しておいて下さいよ。河内
さん。」
「なっなんやねん名指しで!」
じと〜という眼で冠に見られ、河内は条件反射で焦ってしまう。
日々後ろめたさがある河内にとっては痛い視線だ。
冠は最近うるさいからな〜。
まあ、東のうまいパンを真っ先に食べられるやから言う事はきいとくか。
「まかしとかんかいっ;」
「河内ィ〜 手が届かないんじゃ。」
「今度はどれや?」
地下の冷蔵庫に移動した二人はめぼしい食材を全て運び出そうとしていた。
なんせ本店の地下冷蔵庫。考えつく食材は全て揃っている。
「ほれ。これでええか?」
「ありがとう河内!」
「しっかし、お前相変わらず小さいな。少し縮んだんとちゃうか?ははっ」
「縮んでなんかいねぇんじゃ; かっ河内がデカクなったんじゃろっ!」
プイ
「ははっ 拗ねるなや。まあ東はこれ位が丁度ええわな、かわええしな。」
ポンと頭に手を乗せられて。東は言われた言葉をゆっくり理解する。
「なっ かっかわええくねぇよっ!俺は男じゃぞっ!!」
「おっおお・・言いすぎたわ。ごめんな〜東きゅ〜ん。はは;」
むうっーーー
こんな時、急に気づかされる・・・
河内は俺の事「男」と思ってない。良く思っててきっと「男の子」だ。
それは冠に対しても同じかもしれないけど。
でも・・・
冠よりは俺の方が逞しいと思うぞ!
「それよか、冷蔵庫に入ってからもう結構たつぞ。寒うなってきたし
一旦出んか?」
「そうか。夢中になってて気づかんかったんじゃ う〜河内ィ寒いい。」
さっきの強気に向かってた顔とは一変し、東は凍えポーズをとって
河内に甘えた声を出す。
「わーった。待っとれ。今開けるからな。」
「早くっ早くっ!」
ガタガタッ
「・・・・・・なんやこれ・・・」
「? 何?」
ガタガタガタガタッ
「・・・・・・・・・・ドアが開かん;」
「うっそじゃ〜 あはは。」
「・・・・」
「えっ?」
パンタジア本店地下冷蔵庫。なんでも食材保存しております。
現在はパン職人2名も・・・
「冠はまだか〜!もう2、3時間は経ったやろ!」
「わかんないじゃ。でも、ずっとこのままじゃったら俺達死んじまうのか?!」
狭い空間に閉じ込められた二人に正確な時間は計れないもので、本当は1時間
程度の時間だ。
「だっ大丈夫や!大した事ないっ白熊やペンギンは氷の上でも生きとるやろ!」
「俺は熊じゃないんじゃ〜。クスン スンッ」
うっやばいっ! 東は泣き虫やったんだった;;;
何か方法を考えんと泣かれてまう。この状況の上でなだめるのは苦労しそうだ。
何かっ何かっ何か方法〜!
「河内ィ〜凍えちまうよ〜。グスグス」
「・・・・」
隣で座っていた河内は無言で立ち上がった。
「河内?」
「東。 服を脱げや。」
「かくかくしかじかこれこれこーいう訳や。解るやろ。」
座ってる東の前にしゃがみ、河内は説明をはじめた。
「だけど、裸になるなんて・・・」
「このままじゃ東の言うとおり、二人とも凍えちまうんや!指が凍傷とかになっ
たら二度とジャぱんは作れねんで!」
「嫌じゃぁそんなのっ!」
「だったらワイの様に・・」 バサリ 「・・脱ぐんや。」
河内は調子よく東の目の前で上半身全ての服を脱いでみせた。
そんな〜
「大丈夫や!男同士やろ!」
でも・・・俺・・・家じゃ姉ちゃんとしか一緒に風呂入った事ないんじゃ。
「早ようっ東!」
田舎の友達とは勝手が違う。河内は俺よりずっと大きい・・大人なんじゃ・・・
「ああもうっ ワイが脱がしたる!」
河内は待てんと、東の制服のボタンに手をかけた。
その手を無言の視線で追う。
途端、目に飛び込んで来たのは河内の逞しい厚みのはった胸板だった。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・」
「ん? 今何か聞こえませんでしたか?月乃さん。」
「ええ。何か人の声にも聞こえましたわ。」
希望する小麦粉も手に入れ。冠と月乃は本店に戻って来ていた。
「とりあえず。東君達の所に行ってみましょう。」
「そうですね。」
「はあっ!!何で『キャー』やねんっ!!」
突然。目の前の「男」であろう少年に少女の様な悲鳴を上げられて河内の頭は
ちんぷんかんぷんだった。その少年少女は前をがっちりガードして河内を睨み
上げるから、益々訳が解らない。
「嫌じゃぁぁーーー!!そんな汚ねえもの近づけるなぁーー!!」
「なっなんやとぉぉーーー!!!」
ドッカーン(河内の心の音)
「男同士やろっ!何をなまっちょろい事言っとるんやっ!ワイが力ずくでも脱が
したるっ!!」
河内は勢いのまま東の服をつかみかかった。暴れる東を抑えつけての力ずくだか
ら、もちろん東にのしかかる体勢となる。
「キャーーーーー!嫌じゃぁぁぁぁ〜!」
「嫌じゃぁぁぁーーーーー!」
ガチャ・・・
「えっ?」
「はっ?」
「あれ?」
開かないと思ったドアが開いた。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・;;」
「月乃ーーー!冠ーーー!」わぁぁんと東は二人に駆け寄った。
引っ張られてヨレヨレの制服で。
目には涙まで浮かべて。
「東さんっ!」
月乃は走り寄る東を抱きとめた。
「俺っ ヒック・・・嫌だって言ったのに河内が・・ムリヤリ・・・。」
「はっははは;かっ河内さんは、いっ一体何を・・・;」
冠の顔が引きつっているのは河内の目からも分かった。
「ちゃっちゃうねん、お前等誤解しとるっって、事故や!東が男のくせ
にやから・・っはは;ちょっと強引に力ずくでなっ;;はははっ」
・・・・・・・・;
「河内さん、あなた強姦したんですかっ!!!」
「力ずくですのっーーーーーー!」
「わーーーーーん!!」
「ちょっちょっとまてっーーーーーーーー!!!!」
ドッカーン(河内の心の音 くりかえし)
パンタジア本店。
日本のパン「ジャぱん」の完成を目指す3人のパン職人をサポートする
超有名店。
3人は少ない休日もここに集まり、新作パンの研究をしている・・・・・
「もうっ 河内さんはしばらくパンタジア出入り禁止ですわっ!ウチの社
員に手を出さないでくださいっ!!」
バッターン
「月乃〜誤解や〜〜東〜お前も説明しとくれや〜〜」
ガジガジと諦め切れず河内の爪がドアをかじった。
「はぁ〜なんで僕まで締め出されるんです。」
「冠く〜ん!」
「月乃さん怒らせちゃったではないですか、アレでは当分東君を放してく
れませんよ。」
じと〜という眼で冠に見られ、条件反射で焦ってしまう。
「もう!折角僕が二人っきりにしてあげたのに。河内さんは男性としても
最低です。はぁ〜もっと優しく手を取るとかならないんですか。」
「はっ?」パチクリ
「なっなあ、冠くん・・・なんや根本的な所から誤解しとるようやけど・
ワイ等はべつに〜。」
「いいですか河内さん!もうこんなヘマはしないで下さいよ!落ち着いて、
段取り通りやればうまくいくものです。パン作りと一緒ですよ!!」
「おっおお そうか・・・」
ズズイと言われて、思わず相槌を打つ。
「さてと・・・せっかくなので僕も今日はお休みにします。ふふvお二人に
あてられてしまいましたよ。」
「そっそうか・・ほなごゆっくり〜。」???
珍しくにこりと笑って冠は河内に手を振って見せた。
そうか。せっかくやしワイも部屋に帰ってゆっくり寝るのもええかもな。
・・・・・・・・;;
って、ワイの部屋はパンタジアの中なんやけど・・・。
「もう大丈夫ですよ東さん。今度いつ河内さんに襲われても私が守ってあげ
ますからね。」
「うん・・・。」
月乃は丁寧に東を抱きしめると飽きずに背中をなでている。
あったかいんじゃ。
河内、怒ったかな・・・
だって・・・河内は月乃とは違う・・・
河内は・・・
だって・・・あんな裸の河内に抱きしめられたりしたら
・・・・俺どうにかなっちまう・・・・・・。
だから しょうがないじゃろ。
おわり