ーー 嫁に来ないか ーー


ヒュオオオオォォォ〜 深夜にもなれば流石に肌寒い。 「新八どこ行くネ?」 「それは・・・」 隣を歩く神楽に訪ねられ、新八は思わず隣を歩く大男を見る。 「何も聞くなチャイナさん。傷心した男心には旅が付き物なんだよ」 新八、神楽、近藤の3人と定春の1匹は深夜の街をぶらぶらと歩いていた。 自然、足は光のある繁華街へと向かっている。 「旅ならゴリラ一人で行くヨロシ!私と新八は帰るアル!」 「うっ・・・まあそれはそうなんだが、なあ新八君!」 「僕は万事屋には帰らないよ。それに・・帰ったって銀さんは帰って来ないんだよ。神楽ちゃん」 「う〜・・・そんな事ないアルもん・・・ ・・・・」 神楽はまたも俯きかげん。 「わー!わー!わかったっ!わかったからチャイナさん!新八君も!」 「すみません」 「とにかく何処か店に入って飯でも食おう。二人共何も食べてないんだろう?」 「ごはん?!安い定食屋じゃ嫌アルヨ」 『ご飯』を聞いて神楽の顔が明るくなる。 「はは・・わかった。わかった」 「すみません;」 神楽に少しの笑顔が戻って二人はホット胸をなでおろした。 ここは警察署の取調べ室だ。 銀時はここにもう何時間も拘束されている。 一緒にこの部屋に入ったお妙はすぐに解放されていた。 「あの、ちょっとーお兄さん?」 「ああ?」 取調べ担当は真撰組の土方。 「あの、良い子はもうとっくに寝る時間なんですけど・・・」 「ああ?」 「良い子の俺は何故今だここにいるんだっつーの」 「ダメだ。てめぇは重要参考人だからな。犯人の居所を吐くまで解放しねぇよ」 ガッターン! 椅子が勢い良く倒れる。銀時が立ち上がった! 「ちょっ あのおっさん達にまるまる逃げられたのはお前等だろぉがっ!!」 「俺はむしろ被害者だぜ!あっ、てめぇっ何あさって見てやがる!」 銀時は土方の胸倉をつかみかかった。 「うるせぇ!野郎のクセにギャーギャーギャーギャー」 「今総悟が外はってる。犯人の情報をつき止めたら間違いなくてめぇを解放してやるよ」 そんな頃合いに・・・ 「土方さーん!分かりやしたぜー」 バーン!沖田は取り調べ室のドアを勢い良く開けた。 「おお総悟、で状況は?」 「ヘイ。犯人は歌舞伎町北からターミナルに向かってます。このままトンズラする気ですぜ 今、一番隊で追ってます」 「よし、俺等も行くぞ」 「他隊士全員準備出来てます。局長はいねぇですがね」 「あの人は日々俺等とは違った神経使って仕事してんだ。こんなくだらねぇ仕事は俺達 だけで片付けるぞ」 土方はそのまま取り調べ室を出ていった。 「んだよ。結局俺関係ねぇじゃん」 「・・・旦那は言わば保険でしたからね。うまく見つからなかったら、土方さんと俺で口裏合わ せれば上にも報告出来るかなぁ〜って土方さんが」 「何それ君達テロリスト?」 「それより旦那、旦那もついて来るといいですぜ。俺さっき面白いもん見ちゃったでさぁ。 このまま行けば鉢合わせっ土方さん何て言うかなぁ」 沖田はにやにやと子供っぽく笑ってみせた。 「はぁ?総一郎君?」 「いや総悟です;」 「すいやせーん!土方さーん!」 バタバタと沖田は土方のいるパトカーに駆け寄る。 「遅い!!何やってんだ他の奴はとっくに出動してるんだぞ!・・・っと何だそいつは?」 沖田の後ろをバタバタと走ってくる者に土方はタバコを吸う手を止めた。 動物の様な顔、オレンジ色のボディ。やたらデカイ耳が目に飛び込んでくる。 「ヘイ。マスコットキャラクターのポーピ君でさあ。ターミナルは人も多いし、またチンピラ 警察なんて言われたらかなわねぇでしょう。カモフラでさあ」 「・・・・あー;。まあいい。早く乗れ、行くぞ!」 「ヘイ!」 バン!バン!二人が車を閉める。 ドッカーン、ドスッ、バーン!後部座席も閉まる。 「・・・・;おい;このポーピ君のふてぶてしい態度は・・・」 「そんなことより土方さん早く車出してくだせぇ!」 ブロロロロ〜 街中では入りやすくて人気のファミリーレストラン。 新八達はここで腹ごしらえをしていた。 「旅って一体何処行くアルか?私、姉御の友達の大阪が言ってた大阪が来た大阪に行って みたいアル!」 「大阪か。今じゃ江戸に負けないくらい街が広がってるてな。一年中ランニングのお兄さんが 両手振り上げて走り回ってるって聞いたな」 「何ですかそれ・・・」 「大阪人は毎日たこ焼きをおかずにお好み焼きを食べるアル。私も食べてみたいネ!」 「神楽ちゃんだっておむすびおかずにご飯を食べてるじゃない・・・」 「てか、もうほとんど話が観光になってるよね;いいですけど」 新八は少しため息をつく 「いっそ宇宙ってのもいいかもしれねえな。人間がデカクなるぞお!」 「ゴリラそれ以上デカクなったら皆に迷惑ヨ」 「はははっそうだなっ」 神楽は今5杯目の『ライスおかわり自由』をたいらげ茶碗を置いた。 トン 「・・・・ゴリラ、宇宙行けるお金持ってるアルか?」 「ん?なんだ?」 「神楽ちゃん?」 3人は江戸で一番有名のターミナルへやってきた 「いいんですか?近藤さん」 新八はロビーのソファーにて隣を座る近藤に話しかけた。 さすがに人が多い。 こんなに近くでもお互いの声は聞き取りづらい。 「そうだな。俺も海坊主さんにはご指導願いたいしな。なぁに金なら心配するなっ」 「そういうんじゃなくて・・・」 「・・・・」 「私、パピィの所に行きたいアル」 そう言った神楽に二人とも何も言えなかった。 「新八ー!ゴリラー!」 そこへ神楽と定春がバタバタとやってきた。 「神楽ちゃん。どうだった?」 「わかったアル!チケットも3枚買えたネ!」 神楽はゴソゴソとポケットから取り出して見せた。 「なんか1時間後に出発アルって」 二人を見ようと近藤が上から覗き込む。 「1時間か。ちょっとその辺見てまわるか?」 「あっ・・はい。そうですね」 「ゴリラっアイス買うアルっ!!」 「わかった。わかった」 3人と1匹はショッピングコーナーの方へ向かった。 「ねえ。旦那。面白いでやしょう?」 「・・・・・何やってんだ?あいつら」 沖田と被り物を被った銀時は3人に気づかれない様にロビーの柱の影から様子を見ていた。 「3人でこれから宇宙に行くみてぇで。て、見てなかったんですかぁ?」 「・・・・・この被りもんのせいで全然会話が聞こえねぇんだよっ」 「俺だって会話までは聞き取れませんよ」 「って、ああー!!旦那大変だっ!近藤さんがー!!」 沖田の突然の張り上げた声に、銀時は指さす方向を見る。 「!」 「アイス食ってらぁ。俺は働いてるってぇのに」 「ぶっ!」 「なんだよアイスくれぇで・・・ん?・・・総一郎くん?」 「あのチャイナ娘、平気で近藤さんにアイス買ってもらってやがる・・・俺だってなかなか 言えねぇのに」 「はあ?」 銀時が見ると神楽が近藤からアイスを受け取っている。 見た事ない笑顔で。アイスをほおばった。 「・・・・」 沖田と二人、その情景にクギヅケになった。自然目が離れなかった。 その時、 「あ・・・」 「あ・・・」 近藤が神楽の頭をなでた。その動きには何のためらいもなかった。 神楽は少し顔を赤らめたのか、だが嫌がる事もなく受け入れる。 「・・・・っ」 新八は・・・ 新八はそれを見て笑ってる。見た事もない笑顔で。 はっ・・・・何やってんだ? 「ずりぃや、近藤さん・・・」 「総一朗君・・・」 銀時は一人つぶやく沖田を見た・・・ 俯く顔は被り物からでは見れない。 「おい総悟、それとポーピ君、何遊んでんだ。仕事しろ!」 後ろから声がかかった。 「土方さん・・・」 「・・・・;」 「皆位置についたぞ、あとは俺とお前だ」 「・・・・土方さん・・・アイス買ってくだせぇっ!」 「はぁっ?!」 「アイス買ってくだせぇ。そしたら俺仕事しやすから〜」 「何言ってんだっ!んなもんは自分で買え!ていうか近藤さんに言えっ、あっ・・・いねぇん だったか?」 銀時は二人を交互に見た。 「たくっ近藤さんが甘やかすから;ああっわかったわかった。何でも買ってやる。ただし、 仕事が片付いたらな」 「・・・へへ」 「・・・・・おい・・・総・・・」 「・・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『銀ちゃーん、素昆布買ってヨー』 いつもの万事屋リビング。いつものソファー。 神楽はソファーに寝そべる銀時に上から話しかける。 『お前の給料は新八に預けてある。新八に言えっ新八に!』 いつもの会話。 『新八ケチだから3日に1つしかくれないネ。すぐ無くなっちゃうヨ』 ・・・・・・ 『こらっ神楽ちゃん!また銀さんに素昆布買ってもらったんでしょ!』 『ほら、まだポケットに2つも残ってる。何でまだあるのにねだったりするの? 神楽ちゃん?』 そんな二人を遠目で見た事もあった。 ・・・・・・ 『銀ちゃーん、素昆布買ってヨー』 いつもの会話だ。 この後新八に怒られるのもわかってる。 いつもの会話だ。 はっ・・・・; 神楽の奴ゴリラに餌付けられてやがる。逆だろっつーの。 はは・・・ 沖田もいなくなったロビーの柱の下。銀時は一人だ。 変わらず視線は3人を追いかける。 神楽がはしゃぐ、近藤がのっかる。 新八は笑顔だ。 満たされたように・・・ 俺が思い浮かべれるのは怒った顔だけだ。それとツッコミの顔。 あれ?あいつとはいつも何話してたんだっけ? なんだ・・・ これは・・・ 俺はなんでこんな所でこんな格好で・・・ お前はこんな所で何やってんだよ・・・ こっちへ来い。 新八・・・こっちへ来い。 神楽を連れて。 銀時は一人だ。 「あーー!!ポーピ君アルー!!」 神楽の大声に新八と近藤の二人は指さす方向を見た。 ロビーにいた他のお客さんまでも視線を集めた。 「おおっポーピ殿ー!」 「えっえっ?あっ本当だ」 「私朝のテレビで見た事アルネ!ポーピ君は凄いアル!夏はスキューバーダイビング、 冬はスノボ、柔道、空手、スポーツは何でも出来るアルヨ!超カッコイイアルっ!!」 「ポービ殿は警察所の中で1、2を争う豪傑が選ばれるんだ。もの凄く偉い人なんだよ チャイナさん」 「何でわざわざ被り物なんですか・・・って、あっ神楽ちゃん;」 「わーーい!ポーピ君ー!!」 新八が気づいた時には神楽はかけ出していた。 「じゃ俺も挨拶に行ってくるわ」 「あっはい・・・」 新八は気恥ずかしいのか、一人その場で様子を見ることにした。 「わーい!ポーピ君っ・・っふんっ!!」 ドッスン 神楽はにこにこと笑顔のまま近づき、その流れのままポーピ君にボディブローを決めていた。 後ろにいた近藤の目にもその光景が綺麗に映った。 「・・・・・;;;」 ポーピ君は流石に腹を抱えてうずくまる。 「ちょっちょっとおおおお!!チャイナさんんんん!!何やってんの!?えっちょっ;;」 近藤の顔が青ざめた。 「銀ちゃんが言ってたアル。被り物の奴は絶対やり返してこないって。だから殴りたい放題 なんだって」 「えっちょっと;何それっ駄目だってっ!それ駄目だってっ!!」 「おっポーピ君、立ち上がるアルか・・・よーし次は・・っお?」 ひょい。 神楽は近藤に後ろから抱えられていた。 「駄目だってっ!それ駄目だってっ!!本当っ駄目だって!!!」 「放すネゴリラっ!」 神楽はジタバタと腕の中で暴れだす。 「しっ新八くーん;ちょっと来てくれー;;お願いっ止めてくれー!」 何だか向こう側が騒がしい。 「はい?・・・・」 名前を呼ばれた新八はトコトコと近づいた。 だがその目に映った光景は・・・ ドッスッ 「つっう〜何でポーピ殿・・・」 這いつくばったポーピ君の、下からの鮮やかな蹴りが近藤に決まった所だった。 「・・・・;えっ;ええっーー!!」 「おおーポーピ君強いネ!カッコイイアルっ!」 体勢を整えたポーピ君はそのまま近藤につかみかかった。 「なっななな何ですかっ自分は真撰組のっ・・・ぶっっ!」 今度はパンチが決まった。 「・・・・ええっ!!ちょっやめっやめてくださいー!」 たまらずに新八は駈け寄る。 ガシっ 新八はそのままポーピ君の振り上げようとした右腕を抱えて止めた。 「やめてください!ポーピ君さんっ近藤さんを殴らないでっ」 「・・・・」  スッ そのまま新八はポーピ君をすり避けて、近藤に寄り添った。 「大丈夫ですか?近藤さん。口、口切れてないですか?」 「ああ、大丈夫だ。すまんな;」 「顔みせてください。本当に大丈夫ですか?・・・!」 スッ・・・ 新八は近藤の顔を良く見ようと手を・・・ 「!・・・えっ?」 「・・・・」 「ポーピ君さん・・・?」 ガシっと・・・・ 近藤の頬に近づけた手を後ろから掴まれて、新八は振り向いた。 「・・・・」 「ポーピ君さん」 「・・・・」 「あのっ・・・手離してください;」 銀時は その言葉にカッと目の前が真っ赤になったのを感じ、 気づいた時にはその手を弾いてしまっていた。 新八は強い勢いのままに飛ばされる。 尻餅をついた。 しまった、力の加減を忘れていた。 「大丈夫か新八君っ!」 「一番弱い新八殴るなんてポーピ君は悪い奴アル!」 二人が新八の周りを囲んだ。 「大丈夫だよ皆。出発の時間もあるし、もう行こう」 「・・・・」 なんだよお前等・・・ 出発ってどこ行く気だよ・・・ 新八・・・ お前ずっと万事屋にいるつってなかったか なんだ・・・ これは・・・ 俺は何やってんだよ・・・・ つづく
(5)へ

★ここまで読んでくださりもう本当に本気にありがとうございます!
この回で終わると思ったのですが・・・あともう1回の様です;

ついに銀さんが出てきました。
何か「気づく」。みたいな感じで〜(≧ω≦)
段々キャラが増えてきて、絡ませる時には書いててニヤニヤしてしまいました。
「無駄に親切な萌え相関図」のもとに書いてます。ご参考ください。(だんだん無駄じゃなくなってきたかも)



H19.1.18 蜜星ルネ







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