ーー 嫁に来ないか ーー


夜が明けて、朝一番。 「私も銀ちゃんの所に行きたいアル!」 「えっそれは・・・姉上の所に行くって事?」 「そうアル!」 溜まった洗濯物を干していると、神楽が横からやってきた。 「おはよう神楽ちゃん。朝ごはん出来てるから、顔洗ってきてね」 新八は手早く済ませると台所へ向かう 「新八ー!」 「ダメだよ。昨日姉上にもしばらくは来るなって言われちゃったし、神楽ちゃんにも 言っておいてって」 「新八は銀ちゃんに会いたくないアルか!?」 「いや、そーいうんじゃ無くてね。姉上が、」 神楽は新八の後をついてまわる。 「新八は昨日一人で会いに行って、今日はダメなんてずるいネ!」 「新八だって銀ちゃんに会いたいネっ!新八だって銀ちゃんのこと好きネ!」 「なんでそうなるの・・そりゃぁ・・・」 そうだけど・・・ 台所にて、にっこにっこ笑う神楽が横にいる。 いつもこの位笑ってれば可愛いのに・・・ いや、こんな時の笑顔だから可愛いのかな・・・ 「お弁当ぉ〜銀ちゃんのお弁当ぅ〜」 神楽の腰に弁当をさげさせ、新八は膝をついてひとさし指を上げた。 「いい?出来る限り姉上には会わない様に、銀さんが一人の時を狙って行くんだよ」 「おう!」 「銀さんにはその場でマッハで食べてもらう事、大丈夫。銀さんバキュームカーだから早いよ」 「おう!」 「お弁当箱はちゃんと持って帰って来てね。証拠を残さないように!」 「おう!わかったアル!弁当長!」 「・・・;大丈夫かな・・僕は昨日会っちゃったから、姉上に言い訳出来ないし」 「任せるアル。弁当長!!」 ベランダから勇んで走る神楽の姿を見送った。 これで少しは落ち着くかな? 銀さんも神楽ちゃんの心配してたし・・・ なんだかんだで銀さんはわかってるんだ。 きっと・・・ だったら何で急に・・・ わかんない。 僕にはあの人の考えてる事なんてわかんないよ。 神楽ちゃんの事すらよくわかってなかったんだ・・・ ふう・・・ 「ん?あれっ?」 新八はリビングにドンと置かれたピンクの包みを見た。 「ああっ!神楽ちゃんのお弁当っ!持たせるの忘れちゃったっ」 カンカンカン ダッ! 「やばいよぉ、神楽ちゃん!」 お弁当を食べる銀さんを目の前に神楽ちゃんが我慢出来るわけがないっ 二人一緒に食べれる様に二つ作ったのに; 仲良く食べるはずが、一つの弁当を争ってケンカなんて・・・十分ありえるよぉぉ〜 「神楽ちゃん、銀さん、早まらないでぇ!」 新八は眼鏡に似合わず猛ダッシュで走った。 神楽が向かった、新八が走った目的地。 新八の元自宅兼恒道館道場居間にて二人の男女の影がある。 「おい、そろそろなんじゃねぇのか?準備はいいか?」 「ええ、頑張って串刺しにしてあげましょうねv」 二人の姿は戦争に行くかの様な鎧、ハチマキ、刀、槍。 「違うだろっ;脅してでも溜めた借金チャラにしてもらうんだろ?」 「ええ、チャチャッと殺ってしまいましょうねv大丈夫。銀さんなら殺れるわv」 「やるって何をだよ・・・おいおい;」 「あ〜ダメだ。かみ合ってねぇよ。」 銀時は一息つこうと庭に出た。 「あっ銀さん!そっちは・・」 「ん?」くりっ ズズッシャーーン 「うおっ!」 突然、銀時の足元から何か大きい壁が飛び出した。 ズッシャーーン、ズッシャーン その大きい壁は銀時の背をゆうゆうに越えて、そのまま塀を沿いあっという間に屋敷を 囲んでしまった。 「なんだぁ?ガラス??」 「防弾ガラスよ。ついでに防音ガラスでもあるの。ご近所さまにご迷惑にならない様にね」 「・・・・・へぇ〜;なんかデケェの運ばされたと思ったらこんなのまでね;」 てか、こんなの作るより借金かえしとけよ・・・; 「そしてこのガラスはね。一度作動したら完全に出入り不可能な完璧な要塞になるの。 袋の鼠よ」 「ね、取立て屋さんv」 「お?」 お妙が向いた方向へつられて見れば 「アホかい!お前等は〜。無理有るっちゅーにこの設定っ!!」 「よお。おっさん久しぶり〜」 第一訓に出ていたあの人が来ていた。 ・・・・・・。 「わしはなぁ、なぁ〜んも難しい事言うてないで、なぁそっちの兄さんも聞いてや」 その天人は後ろに部下らしい天人を数十人つれて、そのまま話始めた。 「借金だろ?あ〜無理みたいですよ。この家極貧らしいので」 「借金ね。それはもうエエわ。ただし、わしとわしの部下30人分の国に帰る旅費分 出してもらえんかと願いに来てるんや。それで借金はチャラ!どやエエ話やろ?」 「そらエエ話だな。おい、それ位出しちまえよ。お前お水だろ」 銀時は隣に槍を持って立つお妙に言った。 「ん?何だ?話がおかしくねぇか?お前何とかしねぇと新八の身が危険だー!とか 言ってなかったか?」 「そうだったかしら?」 「そうだよっ!だから婚姻届にもサインしたんじゃねぇかっ!」 「兄さん、この姉さんと婚姻届にサインしたんかいな?」 「ああ、疑われずに俺がこの家に入って新八を家から出すにはこれしか無いって言われてさ」 ん?何だぁ?二人の顔がやけにニヤついてね? 「ほぉ〜そうかいそうかい。なら兄さんでもええわ旅費分出してもらえんかい」 「はっ?」 「ここに地図がありますから、テレビもソファーもこたつも揃ってますわよ」 「おおっ!これはおおきに」 ガサガサと二人は地図を広げる。 「はっ?は?」 「嫌だわ銀さん、私達もう夫婦じゃない。あなたの物は私の物、私の借金はあなたの 借金じゃないv」 ・・・・・; 「っああああああぁぁぁーーーー!!」 「はぁっはぁっ」 神楽ちゃんどこまで行っちゃったんだろう・・・ まっすぐ向かったのか寄り道しながらなのか、わからない。 神楽ちゃんを探すより、先回りして銀さんに会った方が早いかも。 新八はそのまま躊躇い無く元自宅に向かって走った。 「はぁっはぁっ」 「ちょっちょっと待てぇえ、お前俺を騙したのかぁ!!」 恒道館道場庭にて叫ぶ一人の男の影。 だが、悲しいかなその叫びは防音ガラスにて外には届かない。 「嫌だわ騙すだなんて。私はウソを言ったつもりはないのよ」 お妙はニコニコとつかめない笑顔で答えた。 「お前、新八が危険だって・・・新八の為だって・・・」 「この道場の再建は新ちゃんの夢でもあるのよ。大丈夫よ30人分の旅費くらい、 家追い出されるまでにはならないでしょうからv」 「なっ・・・」 ポン 銀時の肩を低い背からたたいた取立て天人はニヤニヤと笑いながら声をかけた。 「ほなおおきに兄さん。さてお前等行くで」 「っ・・・・・」 立ち尽くす銀時。 「部屋には子供達がいますから、あまりおどかさないでお仕事してくださいね」 ヒラヒラと手を振るお妙。 「っ・・・・・だめだ・・・」 「えっ?」 「ダメだダメだダメだ! テレビは神楽が見るからダメだっ!ソファーは新八が座るから ダメだっ!!こたつは定春のお気に入りだからダメだっ!!!」 銀時は取立て天人につかみかかった。 「のわっ!あきらめ悪いで兄さん!」 「うるせぇっお前等にやれるもんなんてねぇんだよっ!ウチも極貧だよっちくしょー!」 「どわぁっ!あっあっ天人様に手ぇ出したら国際問題やでぇぇ!」 「うっくそっ!」 ピタリと銀時の動きが止まった。国際問題は困る。 めんどうなのはゴメンだ。 「あら?銀さん何か落としたわよ。なあに?この紙は?」 ガサガサ 「ああ、それはゴリラん所で拾って来た・・・ん?」 「指名手配書?変ね。取立て屋さんとソックリなお顔が描いてあるんだけれど。 これは何かしら?」 「・・・・・おっさん。お前」じと〜 「・・・・・何かしら?」 「うっヤバっ;」 「旅費って逃走資金かよっ!!」 銀時が詰め寄る。 「取立て屋さん。悪いけど、私達は犯罪者を援助する気はさらさら無いのよ」 お妙も一歩二歩と前に出る。 「クッソ。大人しく金さえだしとりゃいいもんを、しゃあない。お前等やっちまえっ!!」 取立て天人は二人を指さし叫んだ。 「はぁ・・はぁ・・・」 新八は家に近づくにつれて聞き慣れた声の叫び声に気づいた。 『・・・ぁーん、さぁーん、お妙さぁーん!!』 「近藤さん・・・?」 『お妙さぁああーんっ!!』 「何?近藤さん?」 家に近づくにつれ、それは確かなものとなった。 近藤は新八の家の横に立つ電信柱にしがみつきお妙の名を力いっぱい叫んでいた。 近藤の騒音からか、見ると家の周りには沢山のご近所さんでいっぱいだ。 「ちょっちょっとすみません。通してください」 新八は人の間を分けて近藤がしがみつく電信柱の下に来た。 近所のおばさんが新八の姿に気づいて声をかける。 「新ちゃんなんだいこの男?うるさいったらありゃしない」 「すいません。今言ってやめてもらいますから;」 「近藤さん!近藤さんっ!!」 「おお、新八君!大変なんだお妙さんがっ!!」 「はい?」 新八に気づいた近藤は何かをうったえる様に新八に説明した。 「俺じゃぁこのガラスは壊せねぇ。頼むっ!お妙さんがぁぁああ!!」 ガラス? 姉上また何か設置したのだろうか? 新八はすぐにも門へ走った。 バンッ 「ぶっ!」 すぐにも弾き飛ばされた。 「何っ?!これはっ!!これが・・ガラス?」 その物体に手を触れようと、もう一度近づいた。 その時、ガラス越しに目に入ったのは、 「ああっ銀さん!姉上っ!!」 銀時とお妙と、二人を取り囲む黒服の天人達だった。 二人は鎧にハチマキと明らかに武装している。 「銀さんっ姉上っ!」 声が届かない。 「お妙さぁぁああんっ!!」 近藤の声がこだまする。 銀時とお妙の二人が顔を見合わせて合図するしぐさが見えた。 あっ・・・・ 知ってる・・・ 分かってる・・・・ 二人が負けるわけないって事、 「銀さん、銀さん・・・」 『ちなみに俺坂田じゃねぇから、もう志村銀時だから』 やめて、いらない。 いらない。 「銀さん・・・ぎっ・・・」   その時、 ドッスーン 「?」 物凄い振動に横を見れば 「こっ近藤さんっ!!」 近藤が白目を向いて気絶してしまっていた。 「だっ大丈夫ですか!近藤さんっ!!」 新八が近藤に駆け寄ると 「ったく、心配ばっかりかけさせてウチの局長は〜」 「山崎さん!?どうしてここに?」 「こんにちは新八君。ちょっと局長運ぶの手伝ってもらえるかな。」 「・・・・?」 気づくと真撰組隊士等が屋敷の周りを取り囲んでいる。 「さすが近藤さんだ。もう犯人の居場所をつきとめてるんだからな」 「------」 「おい総悟、この門ぶっぱなせ」 「-----万事屋の旦那はどうするんで?」 「重要参考人だな」 「へーい」 事が済み真撰組も引き上げた後、上機嫌の神楽が到着した。 「お弁当ぉ〜お弁当ぉ〜銀ちゃんとお弁当ぅ〜」 神楽が見た場所は 「ムヲッ!」 門が破壊され、破片が飛び散った、何かが起こった跡となっていた。 「何ネ?銀ちゃんまた暴れたアルか?新八がみたらきっと怒るネ」 神楽はズンズンと歩き、屋敷の気配をうかがった。誰もいない。 「・・・っと、きっともうすぐ帰って来るアル」 神楽は玄関先に腰を下ろし銀時の帰りを待った。 「もうすぐアル」 「近藤さんっ近藤さんっ」 「新八君、もう局長は寝かせとけば大丈夫だから、日も暮れるし帰った方が・・・」 真撰組屯所にて近藤に離れない新八に、山崎は首をかしげる。 「いえ、目を覚ますまでいさせて下さい・・・・・」 「そう・・?」 察してくれたのか山崎は部屋を下がった。 近藤さん 目を覚ましてください。 お願いです。 僕を・・・ やめて、 いらない、いらない。 あそこにいたかった。 戦いたかった。 銀さんと一緒に・・・ 銀さんのそばに・・・ いつだって銀さんの隣にいたいんだ。 「近藤さん・・・目を覚まして」 置いて逝かないで・・・ 「ただいまぁアル・・・」 神楽はトボトボと万事屋に帰って来た。 屋敷でお昼から何時間と待った。 夕方になっても銀時とお妙は帰って来なかった。 「新八ィ銀ちゃんには・・・」 「?」 人の気配がしない。誰もいない。 リビングに入ると 「ワンッ」 定春が飛びついてきた。 「わっ定春新八は? どこアルか?・・・」 「ワンッ」 「・・・・・っ 新八・・・?」 「近藤さん・・・」 新八はその場を、近藤のそばを一度も放れなかった。 外は真っ暗だ。 何か大事な事を忘れている様な気がする。 でも万事屋には帰りたくない。 『うわぁぁあああっ!』 「?」 突然、外の方から叫び声が聞こえてきた。 外を見ようと立ち上がると、山崎があわてて部屋に飛んできた。 「しっ新八君!今君ん所の子が来て、君を出せって言ってるんだよ!」 「あっ;しまったっそうだ、神楽ちゃんっ」 定春の上に跨った神楽は隊士達を前に子供とは思えぬ程堂々としている。 「定春の鼻は絶対アル。ここに新八がいるね。隠してないで返すアルっ!」 「ワン!」 「ん?あっちアルか定春?なら行くアル!」 「ワン!!」 ドッドッドッドッ 「うわあぁぁああ!新八君来たァ――!」 ドーン!山崎がふっとばされた。 「新八――!」 「神楽ちゃんっ!」 「新八いたー!定春えらいアル!!」 「ワンッ」 見つけたとばかりに神楽は笑ってみせた 「神楽ちゃん、定春・・・ごめん・・」 寝ている近藤を間に挟み 「新八、銀ちゃんずっとまってても道場に来なかったアル。もしかしたら万事屋に帰って 来るかもしれないアル!もういるかもしれないアルよ。すぐ帰るアル!」 「だめだよ、行けない・・・」 「私ご飯食べそこなったネ。お腹ペコペコアル。定春だってそうネ!」 「ご飯なら何か買ってくるといいよ。お金あげるから・・・」 「ん?新八?」 「僕は万事屋には帰らないよ。ごめんね」 「・・・・・えっ・・・?」 「・・・・・」 「なんでネ。銀ちゃんならもう帰って来るアル」 「もう来ないよ。・・万事屋は銀さんの家だから居たくないんだ・・・」 新八は顔を見せるのが苦しくて横を向いてしまった。 「なんでネっ!新八帰るアルっ!!」 神楽が新八の腕をつかむと引っ張った。 「・・・・・・」 ぐいぐい力が強くなる。 「なんでネ!帰るアル!帰るアルぅ〜」 「?神楽ちゃん」 「うわぁぁあああ〜」 泣いた。泣くような子じゃなかった。 「うわぁぁああ〜帰るアル〜、銀ちゃんは帰って来るアル〜うあぁぁ〜」 「っ・・・・」 神楽の叫びに流石の近藤も目を覚ました。 「ん?んあ?・・・おおっ!チャイナさんどうしたっ!?」 「うああぁぁ〜」 「新八君っどうした!?」 「っ近藤さん・・・っうえっ・・・」 腕で顔を隠す新八。泣き止まらない神楽。 「何だ?!どうしたっ;二人共っ!!」 近藤は二人を前にあわてて飛び起きる。 二人の肩に手を置いた。 「うえぇぇ〜銀ちゃんが結婚なんてイヤネ〜」 「イヤだよ、イヤだ・・・いやだ・・・」 「はっ、そうだったお妙さんがぁぁ・・・」 フラリ、ドッスーン近藤がまたたおれた。 「ああっ!ダメですよっ!!気絶なんてもう許さないですからっ!」 「そうアルっ!起きるネ、ゴリラ!」 ユサユサ、ドスドスと揺り動かされて近藤は目を開けた。 「俺はもうダメだ・・・」 仰向けに横たわったまま近藤がつぶやいた。 「それは・・・僕もですよ」 「?新八・・・」 近藤を間に挟み二人は正座している。定春は庭で寝そべって大人しくしている。 「きっと、生きていけない感じです・・・」 そばにいたい。 あの時、頬をつたった理由に驚いたが、すぐにも納得した。 いつだって銀さんの隣にいたいんだ。 姉上でも喜べない。譲れない。 きっと一生ずっと。 僕には耐えられない。 つづく
(4)へ

★ここまで読んでくださりもう本当にありがとうございます!
あともうちょっとです。

「誰も悪くない」「みんな一生懸命、なのにすれ違う。苦しんだりする」
というのを、やりたかったのです。
一人で書いて一人で興奮しています。ハァハァ

銀さんはのん気なヘタレなだけなのですが;


H18.10.23 蜜星ルネ







小説TOP TOP