ーー 嫁に来ないか ーー


「近藤さん、もうすぐ着きますからね」 「わっ!しっかり歩いてくださいっ。僕近藤さんは運べませんからっ」 あれから・・・・・ 家を出た新八は近藤を肩に抱えて真選組屯所を目指していた。 「ちょっとっ はぁはぁ・・・銀さんも手伝ってくださいよ!僕じゃあ支えきれないです」 「おっさん病がうつるから嫌だ」 「何それ。もうそんなのうつったりしませんからっ」 ヘルメットを被ったまま日曜大工(?)姿の銀時は二人の後ろをついて歩く。 『ゴリラにはバナナだ』とか、新八の力の無さをなじったり、とにかく後ろからうるさい。 かといって、手を貸してくれる素振りもなく。新八は自分のふたまわりはある大男を ひっぱって歩くのだ。 足がジンジンしてくる。支える腕は千切れそうに感じる。 「かっ神楽ちゃんのっお昼、もうっ12時っ はぁはぁ・・・過ぎちゃってますよねっ」 「ああ?、あいつだって米くらい炊けるだろ?」 「ごっご飯だけじゃダメですよ。ちゃんと・・おかずも食べさせないとっ」 「・・・・;おっ見ろ新八。着いたぞ」 前方には真選組屯所の門構が見える。 「はぁっもう駄目っ」 目標を目の前にして力尽きた。もう、へたれこみそう。 無理だ。僕じゃ近藤さんは支えきれない。倒れちゃうっ。 ガッシリ 「はっ・・銀さん?」 「たくっここまで来てへばるなよな〜」 背中をつかまれている。隣の近藤さんも。 銀時はそのまま近藤を担ぎ、ズンズンと屯所へと進んだ。 「はぁ、何それ・・・」 助けてくれるなら、最初から手伝ってくれればいいのに。こんな全身ガクガクになら なくてすんだのに。 「新八、早く来い。門開けろ」 「・・・・・・もう」 「誰もいませんね」 「ぶっそうな奴等だな。泥棒に入られたらどうすんだ?ってな、ははは」 「誰もわざわざ警察の所へ泥棒には行きませんよ」 スタスタと新八は近藤の部屋へ進む。前に来た記憶をたどって探した。 「・・・っあれぇ?普通にかわしちゃうの?いつもと違うじゃない!」 「銀さんこそいつもよりキレがないですよ。てか冗談だったんですか?今の」 「・・・そっそうか?;」 「お邪魔しちゃいますよ近藤さん。今、布団も敷きますから」 二人は近藤のであろう部屋へ上がり、布団を敷いて寝かせた。 近藤は眠っている。落ち着いたみたいだ。 しかし、見渡せば近藤の部屋は散らかり放題だった。書類やら食べカスやら本やらで 足の踏み場がない。 中には指名手配犯のビラもあった。 「よしっこれで誰かが帰ってくるまで寝かせときゃあいいだろ?」 銀時は仕事は済んだとばかりにに立ち上がる。 「あっ僕もうちょっとここにいますね。銀さんは姉上の所へ行ってあげてください」 「はぁ?もうちょっとって、いつまでいる気だよ」 「目を覚ますまでかな?心配だし・・・」 近藤さんと話がしたい、少し聞いてみたい事がある。 出来るならば二人で。 近藤さんが何を考えてるのか知りたい。何を感じたのか。 「辛い?」「悲しい?」「これからどうするのですか?」 変なのストーカーだったのに・・・ でも憎めない人。最近は、普通に家に上がりこんでても別段気にしなくなってた。 真面目なのかプライバシーは守る人だったし、 姉上だって「今日はゴリラさんこないわねぇ?お仕事かしら?」なんて言ったりする日 だってあったのだ。 僕は姉上は近藤さんと結婚すればいいとも思ってたんです。 姉上が幸せになれるかは分からないけど、絶対不幸にはしない人だと思ってたから。 絶対守ってくれると・・・ 姉上はどう思ってたのか。 でも大事でしょ、絶対不幸にはしない人なんて弟からしたら安心なんです。 「なんだよタリーな。目ぇ覚ましゃあいいんだろ?」 「?えっ・・・」 すうぅぅぅ。銀時は一つ息を吸い込み。 「おいおい、お妙何だよその格好!?裸エプロンなんて俺達にはまだ早えぇぇだろ?」 「なっなっ・・・・」 「お妙さぁぁぁあああんっ!!」 ガッバッリ! 「わぁっ!こっ近藤さん!」 飛び起きた近藤の拍子に新八はびっくりして後ろに飛んだ。あまりの勢いに眼鏡も ずり落ちる。 「どうだ新八。てかある意味スゲーなこいつ」 「ちょっとー!変な事に姉上出さないでくださいよ!!」 「大丈夫ですか近藤さん?・・・んっ?あれ?」 ガシっと新八は手をつかまれた。 「お妙さん。ああ良かった俺ぁてっきり坂田の野郎と・・・違うんだごめんよ。 だが今やっと確信したよ。君は俺を愛してるぅぅ〜」 「っぎゃあぁぁぁぁぁぁああああ!!」 ドーン 「?」 「ったく油断もスキもねえゴリラだな」 「銀さん・・・?ってあっ!!駄目ですよ蹴ったりしちゃぁ」 近藤は部屋の隅までふっとんでいた。 「あー連れて来てもらっておいてなんだけど。帰ってくれないか」 「・・・・・・」 「言われなくても。オラ新八帰るぞ」 銀時は腰を上げ新八の肩を叩いた。 「・・・・・;でも、あのっ近藤さんお腹空いてないですか?僕何か作りますよ」 「ん?」 「はあっ?」 「あはっ;台所借してもらえれば・・・近藤さん昨日から何も食べてなかったんですよねっ」 「おい新八」 「・・・・・・。おい坂田、お前は帰れ。新八くんにはご飯作ってもらうから」 「あっ・・・はい!」 「はあっ!?俺に指図すんじゃねぇよ。ちなみに俺坂田じゃねぇから、もう志村銀時だから」 「ん?」 「えっ?」 「籍入れちゃったから。ピッチピチのお婿さんです」 『志村銀時』・・・・・・ 「・・・・っ」 プルプル・・・近藤が震えている。 「・・・・近藤さん・・・大丈夫ですか?・・・んっ?あれ?」 ガッシリっと新八は手をつかまれた。 「おっ俺もお婿さんになるっ!!志村勲になるっ!!なあっ新八くんっ!!」 「何ですかっそれはっ!!うわぁぁぁああ!?」 ドッカーン 「ああっ!だから蹴っちゃ駄目ですよ銀さん!」 「うっくそっ・・・・なんだこいつは、新八に襲い掛かかってんじゃねぇよ」 「おっおた・・お妙さん・・・ぐすっ」 「・・・・・」 「俺はもう駄目かもしれないよ新八くん・・・・」 「それは・・・とにかく冷めないうちにどうぞ食べてください」 あれ以上近藤を蹴らないようにと、新八は銀時をなだめ帰らせた。 自分から言ったとおり、台所も借りてご飯も作った。 そういえば神楽ちゃんのお昼の事をすっかり忘れていた。 怒ってるかな?でもしょうがない。 今は近藤さんと話がしたいのだから。 「近藤さん、姉上の事は僕も昨日知って・・・急に、本当に突然だったんですよ」 「昨日・・・あいつと二人でいるお妙さんを見てたよ。ふっ二人で・・・ドッタンバッタン、 途中なんか掛け声とかまで合わせちゃって、あいつ烈しいよ、おかしいよ、 おっお妙さんがっ・・・;おっお妙さんがぁぁぁぁあああ!」 「こっ近藤さん落ち着いてっ;」 新八はあわてて寄り添った。 「俺はもう駄目だ・・・もう生きていけない・・・もう生きていけない」 「そんなに・・・姉上のことを・・・」 「菩薩だよ。女神だったんだ。・・・そこにいてくれるだけで幸せだったんだよ。出来たら 結婚したかったけど」 「でももう駄目だ・・・・」 「近藤さん・・・・」 「愛してるよぉ、あいつなんかより何倍も、絶対。お妙さん・・ぐっすん」 「・・・・・・」 「くっっそ新八のやつ帰れたぁなんだよ、ゴリラに肩入れしちゃってよ。あーもう1発 入れときゃよかった」 銀時は来た道をフラフラと帰っていた。新八の家へ。 「それもこれもコイツのせいだよ。新八に見つからんくて良かったけど」 ガサガサと銀時は近藤の部屋からくすねてきた物を広げた。 指名手配犯のビラ1枚。 新八と初めて会った時に見た天人だった。 「あっ銀さんお帰りなさい。ゴリラさんは大丈夫だったかしら?」 お妙は待っていたのか、玄関先で銀時を向かえ入れた。 「大丈夫もクソもねぇよ。ウホウホ大変だよ、あいつ新八襲いかねないぞ」 「ふふ、それは大丈夫よ。ゴリラさん真面目なゴリラだから」 「ああそーかい。っと」 二人で部屋に上がると、お妙の顔色が急に神妙になる。 「今、電話があったわ。明日お昼に来るそうよ」 「ああ、お前もご苦労様だな。そんな若いみそらでバツイチになるたぁね」 「これくらいしなくちゃ、新ちゃんや神楽ちゃんに疑われちゃうでしょう?」 「・・・・・・」 「私、あの子達は絶対に巻き込みたくないの。変な心配もかけたくないし・・・頼りにし てるわ万事屋さん。ふふ旦那様v」 「かわいくねー女・・・」 「ふふ、そんな事言って婚姻届にサインしちゃうあなたも随分バカな人ですけどね」 ガラガラガラ 「ただいまぁ。神楽ちゃん」 新八は近藤の所からそのままスーパーへ買い物を済ませ、万事屋へ帰って来た。 外では鴉が鳴いている。当然お昼という時間ではない。 「ごめんねぇ、お昼ほっぽいちゃって、今から晩ご飯作るから」 パタパタパタ スッ、リビングの戸を開けると 「・・・・・・・」 「神楽ちゃん?」 明らかにスネた顔がソファーに座って新八を見上げた。 「ただいま。あっお昼はどうしてた?ごはんだけでも食べた?」 「・・・・・・」 ぐぅ〜きゅるる。ん?すぐ横で物凄い大きな腹の音が聞こえた。 「えっ?」 「ワンッ」 「ああ定春、ご飯まだだった?神楽ちゃん、駄目だよちゃんと定春にもドックフード あげてくれなきゃ」 「・・・・・・」 神楽は何も答えない。 「ふう。はいじゃあコレあげるから二人ともちょと待っててね」 「ワンッ!」 「あ!酢昆布アルっ!」 ふふ 新八は台所へと向かった。 「新八、銀ちゃんに会ったアルか? くちゃくちゃ」 台所、料理中に後ろから声を掛けられた。 「えっ、なっ何で?」 ドッキっ! 「定春がそう言ってるアル。新八から銀ちゃんの匂いがするって」 「そっそう?はは凄いね定春・・・」 「本当アルかっ!!じゃあ私も・・」 「ええっかっ神楽ちゃんっ!?」 神楽は新八にピッタリと近づき 「くんくんくんくんくんくんくんくん」 「ええええっ!!何?神楽ちゃんっ!」 そこへ、のっそりと定春が台所に入って来た。 のっそのっそ・・・ 「さっ定春ー!神楽ちゃん取ってー」 助けてくれと新八は定春を呼んだ。 のっそのっそ・・・ 「クンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクン」 「えええええぇぇぇぇーーー!!」 「くんクンくんクンくんクンくんクンくんクンくんクンくんクンくんクンくんクン」 「新八・・・銀ちゃんもう帰って来ないアルか?」 その夜・・・ ピッタリくっついて離れない神楽に降参し、新八は布団を並べて一緒に眠る事にした。 「・・・・・それは・・」 「いつ帰ってくるアルか?姉御も一緒に来るアルか?みんな一緒がいいアル・・・」 「うん。そうだね・・・僕もみんな一緒がいいよ。でももう駄目なんだ」 「何で?何でそんな事言うネ!銀ちゃんは帰って来るアルっ!」 ガバリと神楽は飛び起きて隣で横になる新八の体をゆすった。 「ねぇ新八・・・新八・・・帰って来るアルね。ねっねっ!ねぇっ!」 僕は答え苦しくて横を向いてしまった。 だって・・・『志村銀時』って・・・・ピッチピチのお婿さんて・・・・ 「ねぇ新八!・・・新八っ!」 「・・・・・・っ」 やめて、いらない。『志村銀時』・・・ 「しんぱ・・・」 僕は振り返り神楽ちゃんを見た。 「新八ィ〜」 僕は神楽ちゃんの手を繋いでいた。 安心した神楽ちゃんの寝息が聞こえる。 「・・・・・」 銀さんの匂いがする・・・・ あたり前だ、銀さんの布団だもん。 銀さん・・・僕だけじゃぁ神楽ちゃんは支えられないです。 もっと大きくないと・・・ もっと大きくて強くないと・・・ 銀さんじゃないと・・・ 神楽ちゃんが怖がってる。 僕も不安で怖い。 銀さん、姉上・・・ここにいてあげて、僕が邪魔なら出ていくから・・・ 「くんくん」 その夜新八は銀時の布団の匂いをかいで眠った。 あたたかい・・・・・ 心が落ち着くように感じた。 つづく
(3)へ

★ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
まだもうちょっと続きます。すいません;

〜ここでの萌え妄想〜 
 ・ナチュラルにとけこむ近藤さん
 ・ナチュラルに新八に甘える神楽ちゃん
 ・いい子な新八

よかったら皆さんの萌えポインツ等を是非教えてください。~\( ^-^ )/~

H18.10.4 蜜星ルネ







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