ーー 俺にください! ーー


「はっ?今日も行くのか?」 秋晴れの清清しい朝。 朝飯も食べ終わった所で、今日一日の予定の確認を新八としていた所だった 今月は1ヶ月大工の仕事が入っている 家1軒建つまでの契約なので、暫くは金に困らない 今もウキウキと神楽と二人、法被姿に身支度していた所だった そこに新八の一言・・・ 「僕は長谷川さんの所に行ってきます」 仕事は二人欲しいとの依頼だった為、銀時と神楽の二人で行っていた 新八は毎日お留守番だ だけどその分二人よりも早起きして毎日弁当を作ってくれていた 銀時も神楽もそれが楽しみだった しかし・・・ 気付いたのは3日前だった 1つ多い・・・ 自分で食ってるのかとも思ったが、明らかに新八の食うサイズじゃない どうやら新八は、昼間に長谷川さんの所に行って弁当を恵んでいるらしいのだ 「長谷川さん、ついにダンボールハウスになってたわ〜」 1週間前、そう面白おかしく新八にその日1日の話を聞かせたのは自分だ だけど・・・弁当をやりに行くなんて・・・;; 「じゃあ銀さん、神楽ちゃんお仕事頑張って来てください」 玄関先まで新八は見送りしてくれる 「おう!任せるヨロシ!!」 「ああ、じゃあ後頼むわ」 銀時は後ろ髪引かれる思いで家を出た 「長谷川さん凄い喜んでくれるんですよっ!僕嬉しくって!」 「へぇ〜まあそらそうだろ」 夜になり3人揃っての夕食も終わり、片付けも済ませ、 新八もゆっくりと腰を降ろした 新八は大工の仕事が終わるまで1ヶ月は住み込むつもりらしい 『お前が気張ってどうすんだよ!』 と言ったのも自分だ・・・ でも今は・・・ こんな時間は特に胸に迫り上がるものを感じる・・・ 「美味しい、美味しいって何度も言ってくれて〜長谷川さんちょっと・・」 「?ちょっと、何だよ?」 「ちょっと泣いちゃったんです。そんなに喜んでくれるなんて僕びっくりしましたぁ!」 「へっへぇ・・・」 次の日の朝・・・ 「!?」 銀時は便所に向かう為、台所を横切ろうとしてギョっとした もう1つ増えている・・・ 「おはようございます。すいません朝ごはんもうすぐですから!」 「いや・・・コレって・・・」 銀時は一番小さい、一番貧相なタッパー弁当を指さした 「あっ、今日は僕も一緒に食べる約束したんです」 「・・・・・・誰と・・・」 「えっ?長谷川さんと・・・」 「・・・・・・」 銀時はそのままフラフラ〜と便所に入った 新八は首かしげながら朝の準備を続ける 「遅いな銀さん」 「どうぜ長グソアル、新八あとで髪縛って、」 なかなか便所から出て来ない銀時に二人は先に朝ごはんを食べ始めた ジャー 水洗の流れる音が聞こえた 「・・・・・・」 「あっ!銀さん早く!食べちゃってください!」 「銀ちゃん遅れちゃうアルよ!」 二人にせかされながら銀時は無言のまま食べ始めた 「銀ちゃんっ!!もう!何やってるアルか!」 待っても待っても急ごうとしない銀時についに神楽が怒鳴った 両足はジタバタと畳を足踏みしている 「ちょっと銀さん!」 流石に新八も慌てる 「神楽、先行ってろ・・・ 親方には遅れるっつといて」 「っもう!すぐ来るアルよ!」 新八が声をかける間もなく、神楽はダッシュで出掛けた 「はい!ほら銀さん!着替えて!」 新八は銀時の目の前に着替えを差し上げた そして、やっと目に映った 「なっ・・・何泣いてるんですかっ!あんたっ!!」 新八は驚いて後ろに飛びさがった 「・・・・・・」 何も言わぬまま、顔筋一つ変えぬまま、眼から涙だけ流れている 黙れば美形なだけに 新八は息を呑んだ・・・ 昨日の長谷川さんは顔をくしゃくしゃに曲げて笑って泣いてくれた 自分も泣く時は声を出して泣いてしまうだろう・・・ こんなに綺麗に泣くのかこの人は・・・ 「どっどうしたんですか、銀さん。お腹でも痛いんですか?」 「・・・・・・・」 「じゃぁどうして・・・」 「・・・・・・・」 「銀さん・・・」 新八が近寄って来る 銀時は顔を下げ・・・ 「俺仕事行くから・・・」 「はい」 「弁当は後でお前が持って来い」 「・・・・」 「長谷川さん暇してるなら、お前が連れて来い」 「っぅ・・はい・・・!」 畳を見つめていたら 視界が新八いっぱいになって 「銀さん・・泣かないで・・・」 新八は頬を真っ赤に染めて、自分の袖で俺の涙を拭ってくれた 思わず両腕で新八を捕まえる 胸に迫り上がるものを感じる・・・ そのまま抱き締めてた かっこ悪りぃ・・・・ 胸に迫り上がるものが・・・ 行くなと言いたい訳じゃない・・・ 長谷川さんには何もやるなと言いたい訳じゃない・・・ 金が入ったら長谷川さんには奢ります 酒でも、何でも、何とでもっ! だから・・・ 今日は俺の誕生日なんです。言わないけど・・・ だから神様・・・ これだけは・・・ こいつだけは・・・ 俺にくださいっ! おわり

★ここまで読んでくださりありがとうございます!

長谷川さんダンボールハウスの回のあの1コマが衝撃的すぎて、
ずっと残像が頭から放れませんでした。あれは可哀想すぎる。笑えないっ;;;

そんな切ない想いと銀新萌えをドッキングさせたら・・・
なんか、とても気に入った話になりました!
有難うございます。ダンボールハウスの長谷川さんっ!!

そして、銀さんお誕生日おめでとうございますっ!!

H20.10.10 蜜星ルネ







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