ーー 報告します!兄が僕に惚れてるようです;(サンプル) ーー



兄が悪魔へと覚醒してから1週間が経とうとしていた。

あの日・・・
神父さんの葬儀が終わった後、兄の正十字学園への入学を知らされた。
フェレス卿は元々悪魔に覚醒した以上は学園へ入学させるつもりだったし、僕にとっても兄が近くに
いる事は神父さんがいなくなった今は一番の得策だと思った。
これからは僕が神父さんの代わりに何も知らない兄さんを守り、導いていかなければならい。

兄さんは僕が守るのだから・・・!






学園生活初日、フェレス卿の迎えで僕と兄さんは正十字学園に向かった。
15年間育ててもらった修道院を背に僕は今後の行動と兄さんへの接し方について考え込んでいた。
今まではエクソシストである自分を偽る為に会話は最小限、当たり障りの無い内容に止めていた。
僕は7歳の頃から塾通い、兄さんは家事を手伝って、不自然無く神父さんに兄弟関係に距離を作って
もらっていたんだ。
それが今日からは全ての秘密が暴かれ、無理矢理に見えない壁が解かされてしまう・・・


始業式が終わると今日の授業は終わりだ。フェレス卿に呼び出しを受けた僕は、理事長室に入った。
「では奥村先生にはお兄さんの生活面での監視と逐一の報告をお願いします。」
「はい。」
初授業前、教育者になる上で最後に確認があると理事長室に呼ばれた。兄の入学が余程楽しみだったのか
フェレス卿は普段より上機嫌だ。
「勿論そのつもりでした。兄とは言え人間から悪魔への覚醒が本当に起こり得た事については僕個人としても
とても興味深い症状です。」
「ええ、そうでしょう?」
「兄とは寮も同室にして頂き、その生態について監視、研究をさせて頂きたいです。」
というか、そうしてもらわなければ困る。
神父さんが死んだのが数日前。悪魔に成り自分がサタンの落胤であると知らされ、そのまま突然の高校進学。
そして今日は実の弟が子供の頃から全てを知っていた上で生活を共にしてきた事実を知るんだ。
離れてはならない。
この不確実な状態で更に距離を置かれたら僕等の唯でさえ曖昧な兄弟の絆というものが壊れてしまう。
たとえ嫌われたとしても強制的な環境の中で生活を続ければ、お互い徐々に適度な距離感というものが
生まれるはずだ。
「ええ、プライベートであれ奥村君を一人にさせるのは少々心配があります。ご兄弟である奥村先生が
同室であれば自然ですし、あの子も全てを知った貴方にならプライベートまで監視されてるとまでは
思わないでしょう?実際、貴方がいてくれてとても助かります。」
フェレス卿の願った通りの返答に内心ホッとした。一気に肩の力が抜ける。
「有難うございます。宜しくお願いします。」
僕はフェレス卿に深く感謝の礼をした。
「こちらこそ任務に教職とお兄さんの監視、貴方の時間を奪う程の仕事量ですが宜しくお願いします。
期待していますよ。」

これで形だけでも整った。
後は兄さんがどう受け止めてくれるかだが・・・少しきつく脅す位にしようと思う。
怒りや憎しみは全て僕へ向くように・・・
たとえ嫌われたとしても、腐っても兄弟だ。僕を憎んでる間に時間が過ぎてしまえばいい・・・
1日、2日、一週間と時間を過ごしていけば、ゆっくりと悪魔である事への運命も受け入れてくれるだろう。










本日の塾も終わり僕は早々にフェレス卿より指定された旧男子寮で兄さんを待った。
初授業では流石の兄さんも僕の教師姿での登場に驚いた様子だったが、少しの説明と牽制で状況を受け入れ
たらしい。
・・・・・・短絡的すぎやしないか?
いや、兄弟だからこそあっさり受け入れた風でいて、これから延々と恨み辛みを向けられていくんだろう。

それは覚悟の上だ。
たとえ嫌われたとしても、きっと時間が僕等を歩み寄らせてくれる。


「じゃあまず今日出した課題を片付けちゃおうよ。」
「え!?か・・・かだい?」
「・・・・・。はあ・・まったく、初授業ですらも聞いてなかったのか?先が思いやられるよ。」
「うっうるせぇ!学校は明後日からだし明日は塾も休みだからちょっと気が抜けたんだよっ!」
「まあ、この荷物を先にどうにかしなきゃいけないし、勉強は明日からにしようか。」
「そうそう!先生ぇ!」

そう。たとえ嫌われたとしても・・・
?
何だ?兄さん?急にひっついてきて・・・?
??
「・・・・。」
兄さんが僕の首に纏わりついている。頬をぴったり押し付けてきて・・・
???
「へへへ、雪男ぉ〜v」
「・・・・どわぁああっ!」
柄にも無く大声を上げてしまった。突然の大声に驚いた兄さんも身体を放す。
「何だ?」
「あ、ごめん・・・」
きょとんと呆けた兄さんの顔を目に入れると我に返った。
「うん。・・・ハハッ!お前やっぱ変わったな。ってかこっちが本当の雪男なのかぁ?」
「は?」
兄さんは肩を竦めてにこにこと愛らしく笑った。
愛らしく、って表現は実の兄に向かっておかしいが・・・
いや、だって本当に瞳をパチパチさせてキラキラしてて・・・
ジッと僕を見てくる。
「えっ・・・えっ?何?」
その視線の目的が見えてこない。意味が解からず僕は兄さんの視線を見返した。
バチンと互いの視線が交われば、ビクついた身体が飛び上がって一歩下がっていく。
「っあ!なっ何だよ!急にこっち見んなっ!!」
台詞と一緒に平手が後頭部に飛んできた。ちょっ!一体何なんだっ!!
「った!・・・。」
僕が頭を押さえて兄さんを見返すと、兄さんは自分の行動に驚いたのか固まった。
「あ・・わり、でっ、でもっ!!雪男が俺の事見たりするからだぞっ!!」
今度は急に責任転換。
「・・・・・・・・・・・・。」
まったく意味が解からない。これは少々落ち着いて考える必要がありそうだ。
僕は後頭部を撫でながらそっと机から立ち上がった。
「ちょっと・・・先に風呂に行ってくる。先に入るから兄さんは荷物整理してて・・・。」
「風呂?」
自分のダンボール箱の一つを選んで開ける。
初日は忙しいだろうから風呂道具に歯ブラシタオル、パジャマを一つにまとめて入れて置いたんだ。
「うん。下にね寮の大風呂があるんだ。後で案内するから。」
「俺も行く!」
何故か一緒に僕の荷物を覗き込んだ兄さんが耳元で大声を上げた。
「は?」
「俺も行くよ!一緒に入ろうゼっ!!」
「はあ?ちょっと、止めてよ。今までそんな事した事ないだろう?」
「だからじゃねーか、お前そーいうの嫌だろうな〜と思って、今までは止めてたんだよ。」
「今だって嫌だよ!何でこれからは良い感じになってるんだよっ。」
「ウッソだぁ!!あっ、俺、着替えとか何処に入れたかわかんねぇからお前の借りるな!」
僕の腕に自分のそれを絡めつけ、兄さんは今までで見た事がない爛漫な笑顔を僕に向けたんだ。
「・・・・あ、ああ・・。」
不覚にも僕はその笑顔に目が放せず、肯定の返事をしていた。


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           中略
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翌日・・・
「じゃあ兄さん。仕事に行ってくるよ。お昼に帰宅は無理だけど早めに帰るから、
そしたら一緒に勉強しよう。」
朝、僕は身支度を整えると祓魔師コートを羽織って荷物の整理をしている兄さんを見下ろして言った。
見れば元々大した量ではないのか最後のダンボール箱のようだった。
「おっ、おう。」
あれから兄さんは僕の顔を見てこない。ちょっと視線が重なれば全力で逸らしてくる。あからさま過ぎて
何も言えない。
いよいよやっと嫌われたのだろうか?・・・・・
だけど、おかしくないか?これじゃまるで嫌われるのを待ってたみたいだ。

「はあ・・・それが終わったら課題をやっておきなよ。」
「!勉強は雪男が帰って来たら一緒にやるんだろ?俺、次は食堂行って、足りない夕飯の材料買いに
行くんだよ。」
下を向いたまま箱の中身を見つめていた兄さんが僕の台詞に反応を返す。顔を上げた。
少しむくれた表情が僕の目の前で唇を動かす。
「っ・・・!まっまあ、それも大事だし、・・・やって欲しいけど・・・とっとにかく行ってくるよ。」
「ん?雪男?・・・・」
「じゃっ、じゃあ!」
僕は机の鞄を掴むと急いで部屋を後にした。鍵を使って移動をしたので直ぐにも支部内に到着する。

ビッビックリした・・・ 目が合った瞬間こっちまで逸らしそうになった。
突如固まった心臓が歩行と共に鼓動を刻み出した。胸の奥にまで響く音が落ち着かない。
僕は、どうやら今迄まともに兄さんの顔を見ていなかったようだ。
秘密を作っていたのは自分だけのつもりで、僕だって兄さんの事を何も知ってはいなかった。
どんな表情をするのか、どんな風に笑うのか・・・

・・・・。
・・・・・;
・・・・・・・可愛いい。かなり・・・;;
双子なはずなのに全然違うっ!
ケンカばかりの粗雑な兄さんは仮の姿で・・・・僕の知らない本当の兄さんがいるのだろうか・・・・



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           中略
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「あ・・・雪男・・・?」
「次は他を洗うよ。」
風呂に入ると直ぐに身体を洗う。椅子に座り、自分の前にも椅子を置いて兄さんを座らせた。
背中を洗い終わると足先から洗い始める。少々遠くにある足先に手を伸ばす為に一度椅子と椅子の距離を
詰めた。
これで兄さんと僕は背中と腹で密着すれすれに近づけた。
「ん・・・雪男、足はいいよぉ自分で洗うってっ!」
「どうして?洗わせてよ。兄さんの身体は全部洗いたいんだ。僕らずっと兄弟らしいことしてこなかったし、
確かにスキンシップが足りなかったよね。」
片足を上げて丁寧に擦っていく。兄さんは自分の足が目の前で勝手に洗われていくのが落ち着かないらしく
身体をくねらせながら小さく縮こまった。
片方のふ太腿まで洗い終わると片足に手を変える。水に濡れ泡を乗せた肌の白い足に無意識に生唾を飲み
込んでた。
「っう!・・・ゆ、きお、俺の事避けてただろ?あっ・・・何だ?腹も?」
僕は手にしていたスポンジを転がすと素手でお腹からわき腹を撫で回してた。
「このまま洗うね。直ぐ済むから。」
「えっ?あっあっ!手っ、手ぇヤダ!やめろよぉ!!」
初めての手の平の感触に驚いた兄さんが騒ぎ出した。両足で空を蹴って僕の手の平から逃げようとする。
僕は暴れる身体を無視して両手を動き回した。だって、触りたくて・・・
「兄さん・・・ごめっ」
「あっ、ゆきおっ・・・そこは・・・ふうっん!ふあぁ・・・ア・・・」
堅く真っ平な胸を両手で撫で掴んでいた。女性のように感じてくれたら・・・僅かに期待が叶ったのか兄さんの
身体は硬直し、次第に力を抜いていった。


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..。:*・゜゜・* つづきは是非本編で *・゜゜・*:.。. .。
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★ここまで読んでくださりありがとうございます。

中略はいつも通りのスケベ展開です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

H24.9. 蜜星ルネ

【報告します!兄が僕に惚れてるようです;】 2012年10月07日/COMIC CITY SPARK7にて発行  
蜜屋/蜜星ルネ






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